前回で示したように、一つひとつの発音の訓練をしながら、その発音をつないで単語に発展させます。必ず既習の材料を使って、それを中心に輪を広げていくように、立体的に教えるべきです。まことに「千里の道も一歩から」であって、一歩二歩と、どの方向に向かってどのように歩き出すかを、よく考えて、教えてやらねばなりません。

46個の発音が、このように立体的な輪を描きながら、実際に発音できるようになるには、かなりの時間が必要です。1回の授業(1時間半 ※現在は2時間)で5,6個をマスターさせるとして、2か月近くを費やします。

次に、類似した発音を含む単語を何度も聞かせて、耳できき分けると同時に、正しく発音できるようにします。

最後に46枚のカードが完成するのですが、これを机上に広げて、先生の発音を聞きながら、一つひとつ拾い上げてゆきます。先生はユーモアのセンスを発揮して、口や手や目を動かし、体全体で教えます。先生は名優でなくてはなりません。特に日本語化した英語の単語は、イメージを連想させながら、日本語的にならないよう、正しく発音させるように注意します。
[ kα: ] は「車」、[ ki: ] は「カギ」、[ mi:t ] は「ミートボールのミート」、[ Λvn ] は「オーブン」、[ reidiou ] は「ラジオ」…のように、戦後、なんと多くの英語が入り込んで来ていることでしょう。このように1時間半も訓練するのは、大変な重労働です。この段階ではまだアルファベットを教えません。アルファベットを書けるようになる前に、発音記号を正しく発音できるようにマスターさせるのが大切です。アルファベットを正しく発音できてから、それを書けるようにしなければ、発音記号とアルファベットを混同してしまうからです。

発音訓練ばかりでは退屈してしましますから、もちろん会話を導入します。まず、自分の名目から始めます。

My name is so and so. と言わせると、例外なく、My name ばかり大声で言って、肝心の名前のところはささやくようです。自分の名前を、はっきりと、堂々と言える子どもにすることは、語尾を明確に発音しなければならない英語の発音の練習にもなります。

一通りの挨拶が言えるようになると、wh-形の疑問文をどんどん導入して、身近な物の名前を片っ端から聞いてゆきます。(1)英語の音に耳を慣れさせる, (2)大きな声で発音させる, (3)日本語の音との違いに気づかせる…を目標にして、千里の道の一歩を踏み出したわけです。長い、努力と忍耐の道であっても、力強い一歩一歩であり、理想に向かっての一歩一歩です。

英語上達のコツ 第1回
英語上達のコツ 第2回
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